1999年4月より全13話がテレビ放映された、美少女剣豪活劇の決定版『十兵衛ちゃん -ラブリー眼帯の秘密-』。2016年1月29日にBlu-ray BOXが発売されることを記念して、12月11日(金)に新宿シネマートにて上映&トークイベントが開催された。ファンの投票からセレクトした話数をHD画質で上映し、トークコーナーでは総監督・大地丙太郎氏と監督・桜井弘明氏に加え、アニメーションキャラクターデザインの吉松孝博氏がゲストとして登壇した。

 

まとめ見!Blu-ray BOX セレクション トーク&上映会

▲写真向かって左より桜井弘明氏、吉松孝博氏、大地丙太郎氏、藤津亮太氏


珠玉の名作アニメ4作品のBlu-ray BOX化を記念して、バンダイビジュアルがシリーズ開催してきた上映会&トークショーイベント<まとめ見!Blu-ray BOXセレクション トーク&上映会―バンダイビジュアルが贈る、心に刻んだ多彩な作品たち―>。そのラストとなる第4弾イベントが、去る12月11日(金)にシネマート新宿にて開催された。最後を飾る作品は、1999年に放映された美少女剣豪アニメ『十兵衛ちゃん-ラブリー眼帯の秘密-』。突然「二代目柳生十兵衛」を襲名することになったヒロイン・菜ノ花自由を中心に、笑いと涙、そして何よりハードな剣劇アクションで異彩を放ち、後に『十兵衛ちゃん2-シベリア柳生の逆襲-』も製作された一級の娯楽作となっている。


会場では全13話からファン投票によってセレクトされた3話(第1話『二代目柳生十兵衛誕生!』、第12話『知らない娘に出会ってた』、第13話『夜が明けたら朝が来た』)がHD画質で先行上映され、続くトークショーでは総監督と脚本を務めた大地丙太郎さん、監督の桜井弘明さん、アニメーションキャラクターデザインと総作画監督を担当した吉松孝博さんがゲストとして登壇した。


まず魅力的なキャラクターがどのようにして生まれたのかについては、大地総監督は当初から「当時流行っていたアニメのようには、絶対にしない」と思っていたそうで、主人公の自由も明るくハッキリした定型的な「普通のヒロイン」ではなく、もっと曖昧とした「本当に普通な女の子」にしたかったという。ただし作品は実際に作ってみないとどうなるか分からないので、そんな話は現場では一切していないとのことで、桜井監督も「チャンバラをやりたいとしか聞いていなかった」と語った。ちなみに当時チャンバラを扱った作品は少なかったが、大地総監督曰く「学園モノやホームドラマの要素、それに巨乳を付ければ何とかごまかせるだろう」という計算があったとのこと。続いて本作への参加経緯を聞かれた吉松さんは、「当時のマッドハウス社長の丸山さんから大地さん作品の感想を聞かれて『面白いですよね』と答えたら、こういうことになってしまった(笑)」とコメント。まずはキャラクター原案・むっちりむうにい氏のキャラクター案を基にしてアニメ用のラフ画を描いたそうだが、当初描いたものは桜井監督に全てダメ出しされてしまったという。吉松さんは「こういうの止めてね?」と優しく全否定されたのが辛かったそうだが、桜井監督としては頬骨が出っ張り、ほっぺたが鋭角にえぐれて顎まで尖る90年代に流行した輪郭は「パターンみたいで嫌だから」避けたかっただけで、「ダメ出ししたこと自体、全く覚えてない(笑)。本当に申し訳ない」と済まなそうに語り、会場の笑いを誘った。


一方チャンバラ作品だけに、バラエティー豊かな刺客が毎回登場するのも『十兵衛ちゃん』の魅力の1つ。大地総監督は「よくあんなにバリエーションを思い付きましたよね」と当時を振り返り、落書きのようなタッチで描かれた天地無用之介については「その後『大江戸ロケット』でみなもと太郎先生がデザインしたキャラクターが流行ったりしましたけど、ああいうことをやりたかったんですよね」と語った。また「『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』をやった直後だったからギャグも強烈だったし、個人的に『1つのギャグを引きずらずに、次々と出す』ことは意識していた」と語ると、桜井監督から「それはずっと前からそうでしたよね?」とツッコミが。「ギャグに関しては責任を取らない、ドンドン次に行く。テレビドラマを観ていても『まだそのギャグ引っ張るんだ?』みたいなのが未だにある」と続ける大地総監督に、桜井監督は「ウケなくても気付かない内に流れてしまえば、作り手としては傷付かないで済むのに(笑)」と返すなど、お二人のギャグに対するスタンスが垣間見える一幕もあった。そんな多種多様なキャラクターをデザインした吉松さんは、産みの苦労を聞かれて「たとえば『●●●●っぽく』みたいに役者さんを指定されることが多かったので、そんなに苦労はなかったです。最初の全否定を除けば(笑)」とコメント。その後話題が三本松番太郎・大猿・子猿のバンカラトリオに及ぶと、大地総監督と桜井監督は「あの3人組については特に打合せのようなものはなく、前に一緒にやっていた『赤ずきんチャチャ』のノリそのままですね」と振り返った。感情に応じて字が変化する番太郎のTシャツに関しては、「あれは考えるの苦しかったな~」「思い付きで始めたらエラいことになってしまった」と、ギャグ作品ならではの苦労を感じさせる言葉が次々と飛び出した。


大地総監督は「自分で言うのは何だけど、今観てもすごく良くできている。こんな作品が作れて幸せでしたし、呼んで下さったマッドハウスさんには感謝しかないですね」と語ると、実は『十兵衛ちゃん3』の構想もあったことを披露。この企画は西部柳生が出て来る西部劇にするつもりで、二代目十兵衛後継者の条件である「ぽちゃぽちゃのぷりんぷりんのぼんぼーん」に「……のパツキン」を加えて、新たな物語を構築するつもりだったという。そのために初代十兵衛役・小倉久寛さんの「パツキン」という台詞も収録していたという秘話も語られた。


この他にも、『十兵衛ちゃん』ファンなら興味津々な舞台裏ネタが次々と登場。トーク終了後は登壇者全員のサイン入りポスタープレゼント抽選会なども行われ、来場者全員の笑顔が印象的なイベントとなった。

 

商品情報

<『十兵衛ちゃん-ラブリー眼帯の秘密-』Blu-ray BOX 特装限定版>

発売日:2016年1月29日
価格:15,000円(税抜)
商品内容:第1話~第13話

※Amazon、BVC(バンダイビジュアルクラブ)限定商品

 

まとめ見!Blu-ray BOX セレクション 特集サイト

©1999大地丙太郎・マッドハウス/バンダイビジュアル