今回の「突撃!あみあみインタビュー!」は、キャラクター物がほとんどのあみあみニュースでは珍しい、アート系クリエイター作品の原型師さん。
個性的なカプセルトイやボックストイの数々を発売している、スタジオソータの新製品「DOLLEL FIGURE COLLECTION」(ドレルフィギュアコレクション)を製作した石崎紗央里さんにお話を伺いました!(※文中敬称略)
やってみたらフィギュアが合っていた
──ではまず、造形やフィギュアへの関わりのルーツから聞かせていただけますか?
石崎 原型師という仕事に関しては、専門学校で就職活動をする際に、求人でこういった仕事があるんだということを初めて知りました。カプセルトイやボックストイなどはもともと好きだったので、やってみようと思ったんです。
──専門学校でのご専攻は?
石崎 特殊造形や特殊メイクで、映像向けの美術やイベント用に大きな展示物を作るといったことがメインだったんですが、実は大きいものを作るのはあまり合わなくて。楽しいは楽しいんですが、やっていると一日が長く感じていたんです(笑)。そこで求人に応募する形でゼロからフィギュアをやってみたところ、何時間やっていても楽しくて一日があっという間でした。これは合っているな! ということで、今に至ります。
原型制作会社に5年在籍、2013年からフリーランスとして活動し、商業ではプライズフィギュアの原型を多く手掛けている石崎さん。お仕事場の壁は見事なフィギュアコレクションのディスプレイになっているのですが、その中に原型を担当された知る人ぞ知る人気タイトルのフィギュアも数多く並んでいます。 |
──原型制作会社でのお仕事というのは、あまり表に名前が出ないのでユーザーにはいまだ馴染みが薄いですが、フィギュア業界として重要なポジションになっているところですね。
石崎 そうですね。一からフィギュア造形のお仕事を目指したい方には、勉強になるし早く作れるようになる道かと。波があるとは思いますが、最近また独立した方が会社を起こして人を募集しているという流れで需要も増えています。
──単独でのお仕事をするようになったきっかけは?
石崎 最初に入った原型会社ではチームで分業しての造形や、外部契約しているフリーランスの原型師さんとのディレクションといった仕事も多かったので、自分で全部原型を作る仕事がやりたくなって独立したんです。ですが、他の人と協力してやる仕事も楽しいしできることの幅も広がるので、結局今でもディレクション的な仕事はよくやっています。
──個人のガレージキットでは、オリジナルをメインにやられているんですね。
石崎 キャラクター物も好きなのでガレージキットでもたまにやっていますが、仕事の方でメーカーさんから版権キャラクターのお仕事をもらって、そちらで自分としてかなり楽しい仕事をいただけているので、個人の活動ではできるだけ商業でやらないオリジナル作品をやっていこうと思っています。
好きな要素を詰め込んだオリジナル造形
──そんな中から、こちらが今回製品化される元になった、ガレージキット版の「DOLLEL」なんですね。ファッショナブルなイメージがとても素敵です。
石崎 自分が作ってきたファッションモデル風のアレンジで、いろんな服や髪型を変えられる着せ替えフィギュアといったコンセプトをやりたいと思って始めたんですが、自分で塗ってみたり買ってくれた方の作例などを見ていると同じ造形でもカラーリングによって大きくイメージが変わるなというのに気づいて、そういう方向にも力を入れています。
▲ガレージキットで展開してきた、オリジナル作品。舞妓さん風の胸像に、製品の元になった立ち姿の「DOLLEL」シリーズなど。作例のバラエティ豊かなカラーもこだわりたっぷりです。
石崎 こういったキリっとした顔の女性が好きだったり、パリコレみたいな雰囲気や、レトロ風の髪型など、自分の好きな要素を詰め込んだものになっています。
──デフォルメのバランスにも、独特のものがありますね。
石崎 手塚治虫さんや藤子・F・不二雄さんのキャラといったデフォルメされたキャラが子供のころから好きだったというのがあるんですが、そのうえで造形を学んできた際にリアル系のものを手掛けたり、フィギュアの仕事を始めてからも原型会社の先輩たちからリアルな部分をベースにしたデフォルメ造形を学ばせてもらったこともあって、そういったスタイルが好きなんです。
──強調されたボディラインの中にしっかりした骨格が見てとれるところに、独特のフェティッシュな魅力があります!
▲壁のフィギュアディスプレイには、資料を兼ねた人体解剖系のフィギュアが揃ったエリアも!
石崎 造形をやっている方なら持っている方も多いと思うんですが、人体のここはどうなっているんだろうって、判らなくなったらすぐ見るっていう感じですね。
──いえいえ、これだけの数が揃っている方はあまりいないと思います(笑)。
「DOLLEL FIGURE COLLECTION」製品化について
──では製品版の「DOLLEL FIGURE COLLECTION」についても伺っていきましょう。まずは製品化のきっかけなど。
石崎 スタジオソータの安藤社長自らワンフェスでお声かけいただいて、製品化する運びになりました。カプセルトイでやるということでビックリしましたね。
最初はガレージキット版をそのまま小さくしようという話だったんですが、台座なしにした方がコスト制限の中でより良い仕様にできるということで、膝をついたり座ったポーズに変更することになりました。おかげで結果的に、かなり大きく作ることができました。
──ソータさんは、最近のカプセルトイの流れの中でも、早くから造形クリエイターさんの作風に重点を置いたオリジナルアイテムを多く発売してきたメーカーですね。
石崎 以前にプライズフィギュアのお仕事で作家のオリジナリティを活かしたシリーズをやったことがあったんですが、さすがに版権キャラクターではあまり冒険したカラーリングはOKが出なかったんです(笑)。今回のソータさんからは逆にそういった物をやりたいということで尖ったカラーもやらせてもらっています。
このまつ毛を立体にしてある造形なども、普通のPVCフィギュアのようにタンポ印刷にすると平らに均さないといけないんですが、「そのままでやらないと良さが半減すると思う」と言ってもらって、特別なやり方で再現してあったり。
ソータさんにお声かけいただけて、本当に良かったと思っています。
#スタジオソータ からカプセルトイ/ボックストイで発売予定の #DOLLEL figure collectionのアナログ版原型の製作過程を本日からUPしていきます???♀?
— 石崎紗央里 (@ishizaki_saori) August 18, 2023
今月25日(金)17時頃からスタジオソータのオンラインショップで特典付き商品の予約も開始するので是非ともよろしくです??
↓毎日少しずつUPしていきます pic.twitter.com/M5iwYdwvjt
▲石崎さんのX(旧Twitter)では、カプセル&ボックス版の原型制作過程が丁寧にまとめられています。独自のプロポーションをブロック分けによるポーズ付けから手作業で進め、デジタルデータによってガレージキット版からサイズ変更した頭部を組み合わせるハイブリッドな工程。こだわりのボディラインが形になっていく過程も見どころです!
石崎 自分ではまだデジタル造形に移行はできていないんですが、知り合いにガレージキット版をスキャンしたデジタルデータで縮小してもらったものを元にディテールをシャープに掘りなおしたり、顔の裏から別パーツを嵌め込んでいる目元をデジタル造形で精度の高い構造にしてもらったりと、これまでに培った人脈をフルに使っています(笑)。
▲膝立ちポーズがあみあみでも予約受付中のボックストイ版。全4種の彩色はゴージャスな仕様で、ガレージキット版の作例で人気があったというゾンビ風なども。
▲座りポーズのカプセルトイ版も全4種。手ごろな価格に合わせてシンプルめな彩色にしながら、蓄光、ラメ入りクリアなどの独自仕様も楽しい仕上がりです。
石崎 パーツを入れ替えることでポーズを入れ替えたり、好きな色の組み合わせにするといった遊び方もしてもらえるように考えてあります。製品でどこまでパーツが接着になるかまだ判らないので自己責任になっちゃう部分もありますが、カプセルとボックスであえて目線を逆にしてあったりもするので、いろいろ試してみてほしいですね。
お仕事場拝見!
四方の壁がフィギュアコレクションの棚に埋め尽くされた仕事場で、共に原型師として働くパートナーと席を並べた作業机。
造形では削りながら形を出していくタイプという石崎さん。数多くの刃を使い分ける彫刻刀は、柄の短いタイプを愛用しています。
塗装ブースのダクトも壁の棚に埋め込むように這わされ、すっきりと整理されています。
ブース内に掛けられている変わった道具入れは、原型師仲間が考案してMakuakeでクラウドファンディング募集中という「プラモデル型壁掛け収納」。
別室には型取り・複製作業を行うための専用ブースも。左手にあるのは厚手の鍋を加工して真空ポンプに繋げた脱泡機ですが、鍋部分には某おまけシールがびっしりと貼られていました(笑)。
キャラクターもオリジナルも楽しんでいきたい
──ではインタビューの最後に、フィギュアの今後や造形に関しての抱負など、これからに望むことを聞かせていただけますか。
石崎 昔は裏原系などの一部でフィギュアをファッショナブルなものとして扱う動きはあったんですが、最近はキャラクターフィギュアでもそういったオシャレなものとして考えてくれる方が増えてきたように思います。オリジナル作家さんの造形の製品化が増えてきているように、オタク商品としてだけじゃない幅広い商品ジャンルの一つになってくれたら面白いし、私自身そういうモノづくりができるといいですね。
オリジナル造形を始めてから、そういうものを好きだと言ってくれる反応をいただけてやりがいを感じられました。また一方で版権フィギュアのお仕事も楽しんでいるので、どちらも両立しながら造形していきたいです。
──ありがとうございました!
(文 TAC☆)
DOLLEL FIGURE COLLECTION(ドレル フィギュアコレクション) 4個入りBOX 商品ページ石崎紗央里 X(旧Twitter)スタジオソータ 公式サイト©SAORI ISHIZAKI
※徹底したコロナウイルス感染予防対策のもと取材を行っております。
※画像は開発中のサンプルです。実際の商品とは、多少異なる場合があります。