「あみあみメカスマ秘密基地」ではグッドスマイルカンパニーのブランド『メカスマ』にターゲットを絞って、その魅力をお届け! 大胆なアレンジを加え、MODEROIDでキット化された『戦闘メカ ザブングル』。メカスマの総合プロデューサーを務める田中ヒロ氏(文中敬称略)に、アレンジのコンセプトや作品の持つ独特の魅力について語っていただきました。

※『メカスマ』とは?※
グッドスマイルカンパニーがメカ&ホビーを愛するユーザーに贈る、ロボット、メカニック、ヒーローをテーマにしたホビーブランド。
グッスマならではのクオリティと、ユーザーに負けない熱いハートを込めて送り出されるメカは、時代を超えて幅広い作品からのセレクトで、製品仕様もフィギュア、キット、合体トイなど様々な形態でメカの魅力を再現しています。

1982年からTV放映された富野由悠季監督作品『戦闘メカ ザブングル』は、惑星ゾラと呼ばれる地球を舞台にしたSFロボットアニメ。
高度な科学技術を持つイノセントによる支配と、盗みも殺しも3日間逃げ切ればお咎めなしとなる「三日の掟」に従って、厳しい荒野に生きるシビリアンたち。採掘・運搬・戦闘をこなし彼らの生活基盤を支えるのが、イノセントから与えられた二足歩行メカ「ウォーカーマシン」です。三日の掟を破って親の仇を追い続ける主人公ジロン・アモスが運び屋カーゴ一家から奪ったのが、最新ウォーカーマシン「ザブングル」!

MODEROIDでは1/100スケールで、全身のディテールに変形ギミックと独自のアレンジを加えてのキット化となりました。

では、『ザブングル』には特別の思い入れもあるという田中ヒロ氏のお話を伺っていきましょう。

──今回のザブングル、MODEROIDの中でも非常に意欲的なアイテムに仕上がっていますね。

田中 80年代ロボの商品化は、OVA作品では多くやってきましたが、TVシリーズのリアルロボット物というのはMODEROIDのラインナップの中でも意外となかったポジションですね。仕様面でもかなり盛り盛りです。立体化した理由として、40周年というタイミングに何か作りたいというのもありますが、やはり個人的に好きだっていうのが大きいです。『ザブングル』という作品自体が独特だし、その中でも主役メカのザブングルは建設機械の中に異物がいるっていう独特な立ち位置がありますね。

──あの世界の中での存在感というのを、ディテールやギミックに込めてブラッシュアップされたのが今回のMODEROIDでもあるんですね。アレンジデザインに関しては、どのように進められたのでしょうか。

田中 MODEROIDの原型も多く手掛けているArm-Qさんに、変形機構も含めたコンセプトをお伝えしてデザインしてもらったものになります。

▲Arm-Qによるデザインイラスト。
製品でさらに変更された部分もありますが、立体物で無理なく変形できて現実的な機能も感じさせるものとなっています。

──田中さんからのオーダーで特に重要だった部分というのは?

田中 設定どおりの変形でなくてよいので、ありえそうな機構でというところですね。重機っぽいロボットがいっぱいいる世界感の中で、こういう変形なら地続きになっているよねっていう感覚を目指しました。劇中設定では絵的に誤魔化されている、スキッパーの機首がどうやって手に変わっているかとか、ローバーの機首はどこに消えているのかといった部分の辻褄合わせなどですね。Arm-Qさんの方でも、オーダーに対してさらにアレンジを利かせてくれました。

腕の変形は、大胆に設定と90度角度を変えてしまうことで、タイヤハウスの密着感を保ったまま変形を処理できていたりと、僕自身も想像していなかった、なるほど!というギミックで変形前後の辻褄が合うようになっています。

ここが気になる!

移動用の「ザブングル・カー」から、2台の短距離飛行メカ「ブングル・スキッパー」「ブングル・ローバー」に分離変形。さらに再合体してウォーカーマシンへと変形するザブングル。
MOODEROIDでは独自にアレンジした変形ギミックにより、差し替え・余剰パーツなしで各形態への変形を実現しています。
アレンジされたギミックの中でも、気になる箇所をチェックしてみましょう。

変形時の頭部は完全に胴体内に収納されるのではなく、上半分が出たまま肩の間に挟まる形に。これによって腰を太くせずに可動を内蔵することができ、スキッパー時のボディが前に向けて狭まる、飛行メカとして自然なプロポーションも実現。

ザブングルの腕に折りたたまれている、変形用の手首カバー。スキッパー形態の機首は手首を収納するのではなく拳にカバーをかける形になり、手の甲が露出しています。

田中 当初のプランではカバーが手首全体を覆う形になっていたんですが、図面に起こしてみると寸法的に強度が足りなかったり、手首が小さくなってしまうという問題があり途中で機構を変更しています。最初からこのアイディアだったわけではなく、試行錯誤の結果ですが、良い形に行きつけたと思っています。

▲初期の手首収納案。小さい手首が完全に覆われる機構になっていた。

▲手の甲をそのまま生かした機構改良案。

設定で腰の中にスライド収納されていたブングル・ローバーの機首は、腰の後ろに畳まれるようになりました。さらに機首左右のミサイルポッド部分が倒れて、スキッパーとの合体ジョイントが出現します。

足の甲から脛へと続く特徴的な大型のパーツは、引き起こして飛行時の推進機用インテークとして機能する解釈に。

脚の側面に折りたたまれる、ブングル・ローバーの翼。多数のヒンジで折り畳みながら、翼断面などの飛行メカらしさも盛り込まれています。

田中 ローバーでは翼が特に元の設定での矛盾が多いところで、畳んでいる時と飛行時で明らかに翼の面積が大きく変わっているという。これを解消するために畳む形になっています。

田中 人型でもタイヤが露出していたりと潔いデザインで、一見するとなんとなく簡単に変形できそうな気がするんですけれど、矛盾しているポイントが随所にあるというのがザブングルの難しいところですね。GA Graphicさんが編集された書籍「マスターファイル ザブングル」の中で、設定どおりではないけれどこれならありえそう! と思えるザブングルの変形機構を提示していたことに感銘を受け、機構そのものは違うのですが「ありえるかも」と思えるアレンジをする思想を、模型として変形を再現する上で取り入れています。

──ディテールのデザインは、車形態での機能性を前提にした部分が多い感じですね。胴体の中に内燃機関が入っていそうだったり、インテークから排気までの流れまで見えるようです。

田中 放映当時のザブングルのプラモデルをはじめ、80年代前半のキャラクターキットの多くは「リアル」というキーワードの元にハードディテールが盛り込まれていました。リアルという言葉を追いかけていたあの頃の空気感をくみ取りつつ、車両ならここはこうなるというディテールが盛り込まれています。

腕と腰に付いたタイヤハウスは、ザブングルの大きな個性。前輪カバーにはステップとなる刻みや、ライトが追加されています。

腰の後ろにある放熱口は、胴体内にエンジンが搭載されていることを想像させます。

ローバーのボディとなる脚部側面には、ハシゴ状のステップやハッチの他に、現代のレーシングマシンと同様のガソリン給油口のディテールも。

──特にここのディテールにこだわったというポイントなどは?

田中 ディテールに関しては、足すよりも引いた側の人間なので(笑)。Arm-Qさんがデザインしてくれたディテールを元に、僕からは18cmの商品としてまとまりのいいように、情報量を整理したことがこだわった部分ということになりますね。ビークルの時は車両的なディテールが強調され、ウォーカーマシンになった際はうるさくなり過ぎないように間引いたりしています。

▲(上)初公開時から (下)正式発表時の過程でも各部ディティールが整理されている。

ここが気になる!

変形以外のギミックや、オプションパーツにもこだわりが満載です!

田中 ザブングルの立体化として初めて搭載したギミックが、頭部コックピットのウィンドー開閉です。窓を開けて会話するシーンは多く、この作品ならではの演出でしたからね。後頭部のカメラ部分がレバーになっていて、上下することでウィンドーが開閉します。
また、胸はソリッドな黄色のパーツか、投光器をイメージしたクリアの選択式になっています。劇中では何も語られなかった謎のパーツなんですが、これも色んな解釈があっていいんじゃないかということで。

田中 2台あったザブングルのうち、破損して変形機能を失った機体を再現する羽根パーツです。主人公であるジロンは主にこちらに乗っていたわけですが、主人公機が羽根と腕についたタイヤっていう、デザイン上の大きなアイデンティティを失っているというのも大胆でしたね。

田中 フル装備状態の武装も付属します。こちらの武器も細部のアレンジが効いていて、色気のある仕上りになっているんじゃないかと。

──ザブングルという作品そのものについていうと、ロボットアニメがリアルロボットとスーパーロボットという区分けで語られるようになる、まさにその分類が生まれた時期の作品なわけですよね。

田中 リアルロボットのリアルっていう言葉のきっかけの一つは、『機動戦士ガンダム』の第1次ブーム以降、「このロボが現実にあったとしたら」という意識から生まれてきた一面があると思うんですが、その流れの中で『ザブングル』は当時の商品展開から「リアル」を意識して作られた作品だったと思います。一方で、作品のタッチがリアルかというと、メタ的な発言やコメディタッチの演出も多かったりと、「リアル」と「ギャグ」が入り混じった、すごく独特な立ち位置の作品ですよね。

田中 話を戻して、模型の視点から考えたとき重要なのが、作品タイトルこそ「戦闘メカ」ですが、ウォーカーマシンは基本的には庶民の乗り物で兵器ではないっていうことですね。だから、どんなカスタムがあったとしてもこの世界観の中では得るかもしれないっていう自由さを持ったリアルなんです。そんな中ですら、ちょっとありえなさそう……とも思える「ザブングル」という異物を改めてウォーカーマシンの世界にどう落とし込むかっていうのは、ディテール設定以前のコンセプトの段階から非常に考えたところですね。なんでこの機体はあの世界にいたんだろう、っていうところから想像しながらの作業でした。

──当時のムックでは、ザブングルという機体はイノセントの理想とする、より人間に近い姿形をした象徴的な機械として開発されたものだっていう記載もありましたね。

田中 ウォーカーマシンが本来、再び二本の足で大地を歩くという再生の理念から開発されたって設定ですね。その一つの到達点として登場したのがこのザブングルなんですが、第1話を観ると面白いのが、ジロン以外のキャラの間ではその人間的なプロポーションが不人気っていうところなんですね。あの世界の既成概念に固まったシビリアンからすると、この機体がウォーカーマシンとしてカッコ悪い、戦闘メカとして力強さに欠けるといった言われ方をしている。しかも、人のように歩くいうことを突き詰めた一方で車に変形してしまうというのは、移動手段としては結局タイヤで走った方が合理的だという皮肉ですし、その象徴としてタイヤが腕に目立つ形で付いているというのが面白い。

──他のウォーカーマシンに比べて、運搬、掘削といった作業には向いていない形ですしね。

田中 理念を突き詰めた結果、市場ニーズとずれちゃった残念な機体だったんじゃないでしょうか。しかもその理念を語る階層のイノセントは実際に乗ったことはない……と、現実の仕事現場でもありそうな話ですよね(笑)。あの世界の中でザブングルはコンセプトは尖ってるけど不人気な商品とういうやつで、その反省が質実剛健な形にもどって機能特化したギャリアやブラッカリィに反映されたんじゃないかとか。そういった狭間にある機体を使うのがシビリアンの固定概念に縛られないジロンであるっていうのがまた面白い。もちろん、番組企画のコンセプト変更から生まれたデザインだっていう事実はあるわけですが。そんなことをあれこれ想像しながら開発していました。

──キットを組む際にも、そういった掘り下げから出てくる作り込み方もあるかもしれませんね。ありがとうございました!

様々なこだわりを込めたアレンジにより、独特の魅力を生み出している「MODEROID ザブングル」。受注〆切は6月末までとなります。確実に手に入れるには、予約をお忘れなく!!

(文 TAC☆)

メカスマ 公式サイトあみあみ/MODEROID 戦闘メカ ザブングル ザブングル 1/100 プラモデル 商品ページ

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※徹底したコロナウイルス感染予防対策のもと取材を行っております。
※画像はデコマス(塗装見本)を撮影したものです。実際の商品とは異なる場合があります。
※商品に付属しない備品を使用し撮影している場合があります。ご了承ください。