フィギュア原型師さんへのインタビュー企画「突撃!あみあみインタビュー」。第3弾は、あみあみから発売となる「アイドルマスター シャイニーカラーズ 田中摩美々 ルフォンドゥ・ラメールver.」を手掛ける女性原型師「みしま」さんにお話を伺いました!

作ってみた動画をきっかけにプロ原型師の道へ

──最初にフィギュア造形に興味を持たれたのはどこからでしたか?

みしま 中学生ぐらいのときですね。動画サイトでフィギュアを作ってみたっていう動画を見て「フィギュアって自分で作れるんだ!」と思って。それでマネして作りはじめたっていうのが、フィギュアを好きになった最初のきっかけです。

─当時、作ってみたい作品があったんですか。

みしま 好きな作品が、すごく少ない巻数しか出ていないライトノベルだったんです。アニメ化などもなかったので、これは自分で作らないとフィギュアなんて出ないぞと(笑)。

それから中学生高校生の頃は遊びで作っていたんですけれど、真剣に上手くなりたいと思ったのは高校卒業後にフィギュアの専門学校に進んでからですね。

──その当時は、マテリアルは何を使われていましたか?

みしま はじめはファンドを使っていました。その後、地元の原型会社に入ってデジタル造形を覚えてからは、ずっとデジタルです。

最初はアルバイトとしてデジタルの使い方を教わりながら、専門学校を卒業してから就職したんです。

──進路選択の時点ではもう、完全にプロ原型師の道を志されていたんですね。

みしま そうですね。お仕事にしたいと思っていました。専門学校一年生の時に、先輩がその会社に面接に行くということでついて行ったんです。美少女フィギュア原型が専門の会社だったんですが、一緒に行ったメンバーの中で美少女フィギュア系を作っているのが私だけで。興味があれば来ませんかと誘われて、学校が休みの日などにアルバイトで通うようになりました。

──会社では、どのような仕事から始められましたか。

みしま アルバイト時代はキャラクターが持っている小物やリボンひとつなど、サポート的なところをやりながらデジタルの使い方を覚えていくというのが多かったですね。

──メインで1体やるようになるまではどれぐらいかかりましたか。

みしま 入社してから1年ぐらいでしたかね。

──学校で学べるうえに現場でも学んでいくというのは大きいですね。

みしま お金をもらいながら勉強させてもらえるというのは良かったですね。バイトしていた方が勉強になるなって(笑)。専門学校に行っていたとはいえ独学な部分も多かったので、人体としての作り方など、会社で改めてフィギュア造形の基礎から教わりました。自分一人で学んでいるのとはずいぶん違いますね。お客さんとのやり取りの中での修正指示をいただくことでも、フィギュアとしての見栄えの指摘など、なるほどなと思うことが多くて新鮮な感じでした。

フィギュア造形のこだわりポイント

──いまは個人でプロ原型師として独立されているということですが、フィギュア原型を作る際にこだわっている部分などはありますか?

みしま 一枚絵を立体化するという依頼が多く、元の絵を常に見えるところに置いて見ながら作業するんですが、正面はいいけどそれ以外のアングルはイマイチ……といったことにならないように気を付けています。メインアングルが一番決まっているようにというのはもちろんなんですが、それだけならイラストで十分じゃない?という気持ちもあって。どこから見ても楽しめるように、特に後姿に気合を入れて作ることが多いですね。

──とくに最近のソシャゲキャラなどは、一枚絵しか資料がないことも多いと思うんですが、服の後ろ側などの作りはどんな風に作り込んでいかれるんでしょう?

みしま 近い形の服などを調べて参考にすることが多いです。服のシワなども、本物そっくりというよりはフィギュア寄りのデフォルメのイメージで作っているんですが、そのなかでも本物っぽさが入っていた方が可愛いと思うので、同じような服やポーズの写真を参考に作り込んでいきます。

─他に作るうえでよくチェックするポイントなどあれば。

みしま シルエットを大事にしていますね。色や顔の造形だけじゃなくて、シルエットを見ただけでもキャラクターが伝わるぐらいのフィギュアが作れたらいいなと思っていて。髪型なども、そういう点を気をつけてやっています。

こだわりの後姿も見てほしい

──では、そういったこだわりを踏まえて今回の「田中摩美々 ルフォンドゥ・ラメールver. 」についてですが。最初、このイラストを立体化するという依頼を受けての第一印象はいかがでしたか。

みしま 嬉しかったですね。最初はクールな子なのかなと思っていたんですが、ゲーム中で喋っているところを聞いてみると力の抜けた感じで、そういう喋り方なんだっていう驚きがあって。さらにストーリーを進めてみると表情豊かでいたずらっぽい一面もあって、いろんなギャップのあるところが魅力だと思いましたね。

──元イラストは、横位置に立ち姿を斜めに収めた構図なので、立体で全身を構成するのは難しかったんじゃないかと感じます。

みしま ポーズが上手く決まるかなというのは、ちょっと不安でしたね。それと、イラストではアイドル衣装の布の重なりが多いのにとても軽やかに見せているので、フィギュアにした時に重たい感じにならないように、イメージ通りに見せるバランスに気を付けて作りました。

──全身のポーズというのは、どんな手順で進められていますか?

みしま 最初は簡単にイラストでポーズを検討して、それをラフな3Dで作ってから仕上げていくという手順が多いですね。一枚絵の構図を元にしながら、いったんイチから構成し直していく感じになります。

──イラストに描かれていない部分では、マイクなんかもスタンドを含めて独特のデザインを足元まで作り込まれていますね。

みしま ゲーム中の演出で一瞬だけ足元が映るので、それも参考にしました。雰囲気を出しつつ、マイクであることも忘れてはいけないと(笑)、本物のマイクの機能や構造も確認しながらディテールを作っていきました。

──他にユーザーに向けて、オススメの見どころやこだわりポイントなどあればお願いします。

みしま 指先はいつも気を付けるようにしていて、マニキュアを塗った指先まで目を惹くところなので、細かい表情まで作っています。

みしま 顔については第一印象のクールな雰囲気を大事にしたいなと思いつつ、特典として別の表情パーツも制作させてもらいました。こだわった後ろ姿もぜひ見ていただけたら嬉しいです。

みしま 彩色もクリアやエナメル風の素材感の違いまで判りやすく塗り分けて、とても綺麗に仕上げてもらって感動しました。

仕事場拝見!

監修や打ち合わせ作業もリモートでのお仕事をされているみしまさん。今回のインタビューもリモートということで、作業環境の写真と、データ原型作業のスクリーンショットをいただいてのご紹介です。

マルチスクリーンで、資料などを表示する画面と造形作業用画面に分けているデジタル造形環境。特に元イラストは、常に表示して比べながら造形を進めていくそうです。

みしま 原型会社でデジタルを覚えた際にZBrush専門で他のソフトはほとんど使わないところだったので、私もそれだけしか使っていないですね。硬い小物などはあまり得意じゃないのかなと思いますが、今のところそれでも出来てしまっているので、ZBrush1本に頼ってしまっていますね(笑)。他のソフトも覚えたい気持ちはあるんですが。

最近、知り合いがMarvelous Designerという衣装専用のモデリングソフトを使っていて、興味を持っているところです。写真を参考に服のディテールを作るのも限界があるので、こういったツールが活かせたらと。

▲ 特別に見せていただいた、造形データの初期段階と完成に近い状態。初期段階では、衣装のパーツを揃えながらも形状は最低限で進め、その後に大きく手を入れてバランスを整えているのが判ります。

みしま パーツが全部そろってからじゃないとバランスが判りづらいので、全体をラフに作ってから細部を調整していくようにしています。デジタル造形は便利すぎる部分もあるなと思っていて。例えばフリルなんかはブラシで自動で引いてしまうこともできて、覚えたての頃は多用していたこともあったんですが、それだと単調になってしまうので、いまはツールの機能に頼らずにラフ段階でも自分の手でこねていくようにしています。

▲ こだわりの後姿も、初期のラフ造形と完成状態で。スカートの軽やかさや全体の情報量にこだわった作り込みによる変化をご覧ください!

──では最後に、フィギュア造形の今後について、ご自身の抱負や環境に対して期待することなどあれば教えてください。

みしま 画面上のデータでは良く見えるけれど、実際に出力してみると意外とパッとしないということがまだまだあるので、それをなくしていきたいなと。自分の課題でもあるんですが、ツールの機能的にもより本物の立体物と同様に見えるようになるとありがたいですね。

──ありがとうございました!

(文 TAC☆)

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