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▲写真:大河原邦男氏(右)/アニメーション研究家・五十嵐浩司氏(左)

2015年8月8日から9月27日まで、東京・上野の森美術館にてメカニックデザイナー大河原邦男の40年の歩みを振り返る『メカニックデザイナー 大河原邦男展』の開催が決定。それに先駆けて、本日、東京国際フォーラムにて記者発表会が催された。

記者発表会では大河原邦男氏ご本人と、本展監修者であるアニメーション研究家・五十嵐浩司氏が登壇し、お二人で大河原氏の40年に渡る画業を振り返りつつ、五十嵐氏からは大河原氏のデザインが世代を超えて愛される理由、玩具メーカーとの関わりにおける「職人・大河原邦男」像や、本展の見どころなどが語られた。
(3/17 16:50 写真を追加・追記しました)

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▲「人間大」シャア専用ザクと超小型モビリティ「machina(マキナ)」(写真左)も発表会に駆けつけた。

大河原邦男氏は、『機動戦士ガンダム』『装甲騎兵ボトムズ』等に登場する数々のメカニックデザインを担当した、日本を代表するアニメメカデザイナーである。またアニメ作品に限らず、民間企業から公共事業まで数々の工業製品デザインも手がけている。本展では大河原氏の画業40年を10年毎に区切る「4章編成」で紹介し、デザイン画や設定資料のほか、本展のために描き起こされた初公開画稿なども公開。また、氏がデザインした未来型の超小型モビリティ「machina(マキナ)」も展示される。

 

「メカニックデザイナー 大河原邦男展」記者発表会

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発表会は大河原邦男氏ご自身による来歴の紹介から始まった。大河原邦男氏は、当時新設された東京造形大学の一期生として入学、入学当初はグラフィックデザインを専攻し「数学が必須だったので、最初から工業デザイン科へは行かなかった」とのこと。その後被服メーカーへの就職を経て、4月2日にタツノコプロダクションに入社。実は9日後の4月11日に結婚式と新婚旅行を控えての入社で、これにはタツノコプロも驚いたそうだ。タツノコプロではポスターカラーと筆を用いての背景テクニックを基礎から学び、その中で『科学忍者隊ガッチャマン』(当時はまだ番組名未定)のメカをデザインをやってみないかと声をかけられた。大河原氏は2年間に及ぶ『ガッチャマン』メカデザインの後、『破裏拳ポリマー』『ゴーダム』などを歴任し、その後フリーとしてサンライズ作品も手がけるようになり、やがて氏の仕事は後に国民的アニメとなる『機動戦士ガンダム』のメカデザインへと繋がる。

「職業としての『メカデザイナー』という立場を確立させたい。60歳まではがむしゃらに仕事をしようとどんなオファーでも受けた」という氏の画業を結集した、第1回展覧会が2008年に八王子にて開催。その後、展覧会は島根、新潟、九州、愛媛、神戸などでも開催された。

「(展覧会の)会場に行くと40半ばの方、『ガンダム』を小学生の時に見ていたであろう方がお子さんと来ている。そんな時に『ファンの皆さんも年を取るんだな』と思い、今までの作品を改めて広く見て頂こうと、今回の上野での開催も決まりました」と、展覧会における心境を語られた。最後に「『ガンダム』で育った世代が企業の中堅の立場にいらっしゃって、最近の仕事は実在の企業とのコラボなど、現実とアニメとのバランスが良い、楽しい仕事も多いです。いい老後を過ごさせて頂いています。上野での展示も、楽しみにして頂ければ嬉しいです」と感謝の意を表して締めくくった。

続く質疑応答では、「期間中、大河原邦男氏ご本人は会場にいらっしゃいますか?」という質問に「上野は近いし(関係者から)『毎週来い』と言われているので、もしかしたら居るかもしれませんね」と笑いまじりに答えられた。

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▲株式会社エクスマキナが主導する超小型モビリティ「machina(マキナ)」。「乗れるスマートフォン」「移動できる情報端末」をコンセプトに、大河原邦男氏がデザインを手がけた。将来的には一般販売を目指している。

今回初展示となる、氏がデザインした未来型の超小型モビリティ「machina(マキナ)」については「大手自動車メーカーでは、絶対にできないことを目指してます。今日も展示が間に合わないかもと心配したけれど、間に合って良かったです。販売を目的に作っていますので、連邦やジオンマークを入れて売りたいですね」という回答であった。

 

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五十嵐氏からは、本展の概要や見どころを「大河原邦男氏の歴史」になぞらえて紹介。デビュー作となった『科学忍者隊ガッチャマン』から「ゴーダム」「ガンダム」「ダグラム」「ガオガイガー」「ビルドバーニングガンダム」などの代表的なメカデザインのスライドをもとに、氏の空間認識能力の高さや、工業デザインとして優れている点などを愛情と敬意を込めて解説した。

「大河原邦男氏を喩えるならば『鋼鉄』。仕事のスタンスを曲げることなく、しかし納期やオファーには柔軟に対応する。重機のワイヤーロープのようなイメージで、何よりも強くしなやか」「本展で、大河原邦男氏の40年に渡る画業の魅力を存分に味わって頂きたい。大河原氏の『歴史』を伝えるのが本展の目的です。メジャーな作品から、メディアに出ていないマイナーな作品も選出しておりますので、空前絶後の大河原ヒストリーが展開しますのをお楽しみ下さい」と、監修担当として五十嵐氏も本展への意気込みを語った。

 

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▲『ガンダム』『ダグラム』『レイズナー』『ボトムズ』といった、おなじみのメカがデザインされたポスターも見どころのひとつ。

限定ガンプラの発売や、ガンダムフロント東京との相互割引など、物販やキャンペーンも実施。上野での開催期間を終えたあとは、岩手県盛岡市での巡回展示も決定している。熱心なファンからファミリーまで巻き込んで、この夏は「大河原邦男」旋風が起こりそうだ。開催期間やチケットの購入方法など、詳細は公式サイトをチェックしよう。

 

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▲「machina(マキナ)」「シャアザク」とともに並ぶ大河原邦男氏。本展は氏の過去と未来、全ての仕事が凝縮された内容となっている。

 

『メカニックデザイナー 大河原邦男展』公式サイト

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